「日光 天然の氷 四代目徳次郎」

kaunet2008-08-23

東京新聞に掲載していただきました


天然氷を守れ! 『自然保護の大切さ伝えていきたい』
2008年8月22日

天然氷で作ったふわっとした食感のかき氷を手にする山本さん=日光市


 全国にわずか五軒という天然氷の生産業者。このうち廃業の危機にあった日光市の一軒を地元の有志が受け継ぎ、今夏かき氷として売り出している。「四代目氷屋徳次郎」の屋号を掲げる自営業山本雄一郎さん(57)は「天然氷は豊かな環境の産物。自然保護の大切さを伝えていきたい」と話す。 (小倉貞俊)

 昭和初期には全国で百軒ほどあったという天然氷の生産地も、冷蔵庫の普及や職人の高齢化、地球温暖化の影響で激減。いまは日光市に三軒と埼玉、長野県に一軒ずつを残すのみに。うち日光市御幸町で大正時代から続く製氷業、吉新良次さん(70)が後継者不足のため、一昨年の秋に廃業を決意。山本さんが「伝統文化を絶やしてはいけない。自分が引き継ぐ」と吉新さんを一カ月にわたり説得、ようやく許可を得た。

 氷作りの期間は十二月末−翌年二月。日光連山からの清水を市内の採氷池で凍らせる。雪やごみを毎日取り除き、切り出しや運搬に手間も人手もかかる重労働だ。山本さんは友人の協力も得て試行錯誤、ことし約百六十トン、約四千枚の氷を切り出すことができた。

 この天然氷で作ったかき氷は、ふわっとした食感と解けにくさがウリで、通常のかき氷のように「キーン」と頭をさす不快感がない。人工の氷が零下二五度ほどの低温で短時間で作られるのに比べ、天然氷は二十日間かけ、零下一〇度前後でゆっくり凍らせるためだとか。

 「天然氷は健やかな山で生み出される澄んだ水のおかげ。二酸化炭素を出さずに作れ、地球温暖化を考えるきっかけにもなる」と山本さん。かき氷はハンターマウンテンゆりパーク(那須塩原市)、日光霧降高原チロリン村のほか、来月十八日開設の県庁直売所でも販売する。